2012年02月25日

偶数と奇数をたすと答えが必ず奇数になることを説明してください。

日本数学会によって大学生の数学力の調査が行われた。その結果を受けて、大学生の学力低下や「ゆとり教育」批判のようなニュースが流れた。しかし、日常生活で使わないような数学の問題ができないというのは当然のことであるし、その辺の道行くサラリーマンや主婦に同じ問題をだしても、できないのは同じだろうと、私は思う。

「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言
http://mathsoc.jp/comm/kyoiku/chousa2011/

たとえば、こんな問題。

問題2−1 10分
偶数と奇数をたすと答えがいつも必ず奇数になることを説明してください。

解答例1(日本数学会による正答例)
偶数と奇数は、整数m、nをもちいて、それぞれ2m、2n+1と表すことができる。そしてこの2つの整数の和は
  2m+(2n+1)=2(m+n)+1
となる。m+nが整数なので、この和は奇数である。


これは中学校で教えられる標準的な解答だが、欠点がある。さいごに、2(m+n)+1が奇数であることを使っているが、これの証明がない。偶数+1が奇数であることを、証明せずに、偶数+奇数が奇数であることの証明につかうのは、一種の循環論法になってしまう。さらにいえば、奇数が2n+1と表すことができるというのも、証明すべきことなのに、証明されていない。したがって、私なら次のように解答する。

解答例2
偶数2mと奇数yの和が、偶数2nであると仮定する。このとき、
  2m+y=2n ⇔ y=2(n−m) 
となる。n−mは整数なので、yが偶数となり矛盾。よって、偶数と奇数の和は、奇数である。

正答例を10分で答えられた人は、論理的な思考ができたというより、習ったことをよく憶えていたのだろう。

■ アクセスが多いので追記

解答例1は中学校二年の文字式の計算の応用で習う。その際、奇数(偶数ではない数)がつねに2n+1と表され、また2n+1がつねに奇数であることは、証明しない。いくつかの例について、奇数が2n+1と表されることを示して納得する、という方法を採るのがふつうだ。

報告書は、偶数と奇数を足して奇数になる理由として、「思いついた例ではすべてそうだったから」というのを「深刻な誤答」としているが、それは妥当だろうか?

(なお、2n+1が奇数になることの証明はたいして難しくないが、それは解答例2とほぼ同じことになる。それならば2n+1はつかわずに直接証明してしまった方がシンプルで良いだろう、というのが私の解答例2である。)

また全般に、問題と採点基準が、広い意味での数学力を見るというよりも、テストの得点能力に偏っていると感じた。たとえば、放物線の特徴として、「∩型」は誤答で、「上に凸」と答えなければならない、というのは受験が終わってしまえばどうでもいい話だろう。


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posted by yanagisawa at 14:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
> 2(m+n)+1 が奇数であることを使っているが、これの証明がない。
奇数の定義は「整数 n が奇数であるとは、2x+1=n となるような整数 x が存在するときにいう」とするのが慣例でしょうから、議論中に整数 m+n が存在する以上、その議論中で 2(m+n)+1 を奇数と結論することにはいささかの論理的飛躍もないと思われます。
Posted by at 2020年07月16日 01:22
奇数の定義は2で割り切れない整数です。
Posted by at 2020年07月16日 23:08
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