2011年07月15日

『ザ・カナリア』(誠文堂新光社)についてニ、三の事柄

誠文堂新光社の『ザ・カナリア』を読んで腑におちないところがあったので、確認のために"The canary handbook"を取り寄せてみたら、『ザ・カナリア』とそっくりなところがあって驚いた。

それで誠文堂新光社に(1)転載は原著者の了解をとっているか。(2)転載は適切なものか。と問い合わせたところ、次の回答が来た。

(1)原著者の了解はとっておりません。
(2)適切と考えております。

下記のような事由からです。

●104と106頁の図は、原典の文献を参考に、他の資料やオリジナルデータを元にリライトし加工した図ですので、オリジナルの範囲内と考えます。

●122と123頁の遺伝の「式」は、“The Canary Handbook”を参考にし、他の資料でも内容の正当性を確認しております。遺伝式の内容はオリジナルではなく、表現形式も一般的に用いる書式ですので、転載ではないと考えます。


2011071501.jpg

・Matthew M. Vriends, Tanya M. Heming-Vriends: "The canary handbook", Barron's Educational Series
・島森尚子:『ザ・カナリア』、誠文堂新光社

で、まず図から。

2011071502.jpg“The Canary Handbook”
2011071503.jpg『ザ・カナリア』104頁

トレースしてるだけです。翼の輪郭まで忠実。

2011071504.jpg“The Canary Handbook”
2011071505.jpg『ザ・カナリア』106頁

トレースしたものを、写真に埋め込み。

ちなみに、元ネタがないとこんな図に。

2011071506.jpg『ザ・カナリア』107頁


つぎに、遺伝の式について。たんに“The Canary Handbook”に似てるから転載だと言いたいのではなく、次の文献を読んでたので、これは転載だなと判断した。

・Octavio Perez-Beato:"Fundamentals of Color Genetics in Canaries: Reproduction and Control", RoseDog Books
・G. Walker and D. Avon:"Coloured, Type & Song Canaries", Blandford Press
・G.T.Dodwell:"Encyclopedia of Canaries", T.F.H.Publications, Inc
・"Singing Wings Aviary"
http://www.singing-wings-aviary.com/Canaries.htm
・"CANARICULTURA EN PUERTO RICO"
http://www.canariculturaenpuertorico.com/

(1)“The Canary Handbook”に書かれていることがそのまま記載され、『ザ・カナリア』内での整合性がとれていない。

たとえば、メラニン色素についての変異種にかんして、「グリーン>アゲイト>シナモン>イザベル>パステル」という優劣を述べているのは、“The Canary Handbook”だけで、『ザ・カナリア』はこれを載せている。一方で、「パステル・レッド・アゲイト・アイボリーフロスト」という上記の優劣に矛盾する品種名をそのまま載せている。

(2)『ザ・カナリア』の遺伝の式は、すべて“The Canary Handbook”にあるもので、順番もそのまま。

有覆・無覆、レモン、ドミナントホワイト、レセッシブホワイト、シナモン、というのは“The Canary Handbook”に出ている順と一致する。一方、赤、オパール、パステル、モザイク、アイボリーなど品種として紹介したものでも、“The Canary Handbook”に遺伝式が書かれていないものは無視されている。

(3)無覆輪について、“The Canary Handbook”と同じ。
無覆輪×無覆輪がすべて致死になるとあるのは、“The Canary Handbook”だけで、根拠も不明。それが、なんの説明もなくそのまま載っている。

2011071507.jpg 2011071508.jpg

(4)“The Canary Handbook”の誤りがそのまま載っている。

2011071509.jpg
「レセッシブホワイト×イエロー系/ホワイト=50%イエロー系/ホワイト、25%イエロー系、25%レセッシブホワイト」というのは明らかに誤りで、なんでこんな事が、と思ったら“The Canary Handbook”の誤りを写しただけだった。

2011071510.jpg
4番目の式は、一見意味不明なので、『ザ・カナリア』では無かったことにしている。ちゃんと考えれば、次のように訂正できる。

3番目、Yellow/white × yellow/white = 50% yellow/white, 25% yellow, 25% recessive white
4番目、Recessive white × yellow/white = 50% recessive white and 50% yellow/white

というわけで、この遺伝の式は著者による解説じゃなくて、単なる転載だよなあと思った。

なんだか揚げ足をとるようで申し訳ないけれど、海外の本を引用して紹介するなら、出典を明らかにして、原著者に敬意を示そうよ、と言いたいだけ。

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posted by yanagisawa at 02:06| Comment(4) | TrackBack(0) | 本の感想
この記事へのコメント
人の文作をあたかも己のものとして出版というのも、自分の才能の無さを他人に補ってもらってるみたいで情けないですね・・・しかもトレース認めた上で合法と言い放ってるのは恥ずかしい・・・
英文を訳せば天才OKなら海外の小説も版権なしで売っても問題ないってことかな?
明らかに違法なのに・・・

とはいえ島森尚子とググるとすぐ下にララビスサイトの名前が(笑
ララビス君VSオバサン の戦いみたいで興味深いです
Posted by 井上トロ at 2011年07月15日 02:44
柳沢さんはどこの院へお進みになる予定ですか?

今回のこのケースは、巷ではよくプロの漫画家さんでもやられてて問題になっているものの、裁判まで行くケースはあまりないようですね。

鳥の骨格のトレースですが、これがオリジナルのデザインか?というと、そうでもなく、扱い的にはトレースであっても人体模型と同様の扱いになるのかもしれません。人体模型は誰かのデザインか?というとそうでもないので、難しいところですね・・・。

また、これが英語圏の雑誌の売り上げにどれくらいの被害を与えているのかという被害額を見積もっても、日本で売れている雑誌を外人が買うのか?という視点で見た場合に、どうなのか・・・。


とか。


わたしも柳沢さんと同様に出典くらい書いた方が知的センスが出るし、読者もその方が元の文献を辿り安いのでいいのではないかと考えます。


しかし、この雑誌社はいい仕事をしてくれていますね。
今時、常識のある小学生でもこんなことしませんよ(苦笑
Posted by ぽこ at 2011年07月16日 22:44

× 辿り安い
○ 辿りやすい
Posted by ぽこ PS at 2011年07月16日 22:51
ちなみに出版社に期待していたのは、「次に印刷する分から出典を入れます」というような内容でした。べつに難しいことじゃないし、ちゃんと引用するならまったく問題ない話なんですけどね。
Posted by 柳沢 at 2011年07月19日 05:53
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