2011年07月10日

文鳥の歴史を少しずつ書きます

文鳥が江戸時代からいて、白文鳥は日本で誕生した、というのはわりと有名で、色んな飼育書に書いてある。ただ、飼育書にある歴史はあくまでもお話という扱いで、どこまでが事実なのか、よく分からない。

たとえば、最近読んだ『小鳥図鑑』(島森尚子、誠文堂新光社)には、文鳥についてこうある。

当時、ブンチョウは中国から輸入されていたと考えられますが、中国では「文鳥」とはキンパラ属の鳥の総称でした。17世紀にわが国にやってきたとき、日本では(おそらく)最初に入ってきた現在のブンチョウを指す名称になったようです。

うーん、という感じだ。

まず江戸時代のブンチョウの輸入の記録は、全部オランダ船によるもので、中国からの輸入はないと思う。つぎにキンパラ属の総称として「文鳥」というのは、現代の中国語で、17世紀にはない。(文献があったら教えてください。)そもそも、キンパラ属という概念がないからで、十姉妹のようなフィンチのあいまいな総称としては「雀」が使われていた。ついでにいうと、日本に来たキンパラ属の最古の記録は、狩野常信が1667年に描いたヘキチョウ。

歴史的なお話と言うのは、飼育本にとっては添え物のような扱いなので、いちいちあげつらう事でもないだろう。それに納得いかないなら自分で書けばいいではないか、ということで文鳥飼育の通史を書こうと思っているけど、じっさい自分で調べて書くと面倒で、いや気がさしてきた。

はじめは、まとまったテキストとして書くつもりだったけど、無理そうなので、断片的なまま小出しに記事にしていこうと思う。

まず、文鳥は、しばしば、中国から渡来したと説明されるけれど、これは「文鳥」という漢字の名前がついていることによって生じた誤解。

一七世紀までの中国語では「文鳥」はブンチョウを意味していない。たとえば、台湾にある故宮博物院には「文鳥」の絵は三枚あるが、どれも文鳥ではない。

  (1)錢選(1235頃‐1301以降):名畫薈錦 宋錢選竹子文鳥
   これは、コシジロキンパラあるいは他のキンパラ属の鳥。

  (2)明宣コ寶繪 桐實文鳥(明の宣徳帝(1426 - 1435)時代か?)
   これは、イカル。

  (3)藍瑛(1585-?1670):明藍瑛畫花鳥 梅花文鳥
   鳥種不明だが、文鳥ではないスズメ目の小鳥。

また、諸橋大漢和辞典には、「文鳥」をブンチョウの意味でつかった用例は存在しない。

いっぽう、清の康熙帝の命によって余曽三が百種の鳥を写生した『百花鳥図』(1700年頃に成立)には、文鳥の絵がある。しかし、「文鳥」という名前ではなく「瑞紅鳥」という名である。

この写本は日本に持ち込まれ、鳥の中国名と和名を対照するのに使われた。そのため、江戸期の書物には、文鳥の漢名は瑞紅鳥とされている。瑞紅鳥の名がどのくらい一般的であったかは不明だ。

『百花鳥図』の「瑞紅鳥」の図は不正確で、おそらく実物を見ずに描いたと思われる。また、「この鳥はびん中(福州)に生まれる。」とある。福州は海外との交易が盛んだったところであるから、文鳥が持ち込まれていたのだろう。

jpegOutput.jpg
「瑞紅鳥」国会図書館蔵
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1287328/16


堀田正敦の『禽譜』には、前述のように中国名の和訳らしき「いなすずめ」があるが、他には「清朝異称」として「洋蝋嘴」を挙げている。この名称も、実際に中国で使われていた。

清代末期に徐珂(1869−1928)が様々な事物や風俗を記録した『清稗類鈔』の中に、蝋嘴の一種として、「洋蝋嘴」が紹介されている。蝋嘴とはシメのことだ。シメとブンチョウは明らかに別種だが、この本は科学的な事実ではなく、見聞の記録なのでしかたない。

「又一種,體略小而嘴紅者,別稱洋蝋嘴。」とあるから、「他に一種ある。身体は小さく、嘴が赤い、別称、洋蝋嘴。」という意味だろう。

では、オランダ人がジャワ島から運んできたブンチョウを、「文鳥」と名づけたのはでは誰だろうか。

にほんブログ村 鳥ブログ 文鳥へ
posted by yanagisawa at 23:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 飼鳥の歴史
この記事へのコメント
http://www18.ocn.ne.jp/~bell103/bunchurekishi.html
名前の由来はこのページがそれなりに詳しいようですが、さらなる詳細を期待しています♪
Posted by ぽこ at 2011年07月11日 04:36
この前沖縄のペットショップに行ったんですが文鳥見なかったです
あんまり知らない鳥とかいたし
野鳥もスズメとかセキレイとか見ないし・・・
ひょっとしてスズメはおきなはにとっては外来?
Posted by 井上トロ at 2011年07月15日 02:52
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/46678452

この記事へのトラックバック