2010年02月09日

今日は夏目漱石の誕生日だそうです。

漱石といえば「文鳥」なのである。

スミレくらいの小さな人に生まれたい、と呟いた漱石は、その十年後にスミレくらいの小さな文鳥を飼い、そして、死なせた。

書斎でペンを走らす漱石のかたわらで、文鳥は音を立てながら餌をたべた。それは、黄金のかけらで宝石をコツコツと打つような音だった。如雨露(じょうろ)で水をかけると、水玉が文鳥の白い羽のうえをきらきらと転がった。何だか淡雪の精のような気がした。

朝、目覚めた漱石が文鳥のところへ行くと、文鳥は、紅く縁どられた黒い瞳で漱石を見つめた。そのとき、漱石は、さっきまで見ていた夢を思い出した。それは、昔知っていた、美しい女の夢だった。もの思いにふける女のうなじを、漱石はなでた。女は笑って身をよじった。

文鳥は死んでしまった。餌をやり忘れたからである。

そしてその晩、漱石はこんな夢を見た。

柔らかなうりざね顔の肌の白い女が、漱石を見つめていた。漱石が女の黒い瞳をのぞきこむと、そこには漱石の姿が映っていた。女は、
「もうすぐ、死にます。」といった。
「死んだら、埋めてください。真珠貝で墓を掘って、星屑の墓標を立ててください。そして、百年そこで待っていて下さい。きっと逢いに来ますから。」

漱石は言葉どおりに待っていた。やがて、傍らに百合が伸びてきて、一輪の花を咲かせた。漱石は、その白い花に接吻して、そして気づいた。「百年はもう来ていたんだな」と。


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2 小品
3 「文鳥」は読んでいると胸が痛みます。
5 生々しい漱石の闘病生活描写(「思い出す事など」ほか)
5 文鳥
3 正直に言って・・・


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posted by yanagisawa at 10:44| Comment(6) | TrackBack(0) | 本の感想
この記事へのコメント
最近私が読んでる本は国際政治の裏とか謀略とかのドロドロの現代史が多いです。あまりの酷さにストレスで心がすさんでいます。漱石の本は殆ど読んでいないのでこれは知りませんでした。美しい表現。心が洗われそうですね。読んでみようかな。なんか切ないですね。
今、白い鳥が、私がパソコンしてるのを見ながらコツコツとエサをついばんでいます。
Posted by アコ at 2010年02月09日 19:41
漱石は、飼い主としてはひどいのですが、作品はなかなか面白いですよ。
Posted by 柳沢 at 2010年02月10日 13:16
夏目漱石はあんまり読んだことがないですね(⊃д⊂)
長編のイメージが強かったので、こういう短編集があるとちょっと読んでみたいなと思います。
どうもこの時期の作家の作品は暗いネガティブなくだりが多くて苦手(;´д⊂)

ふと思ったんですが、素人の人が鳥を飼うときに気付かないのってけっこう餌問題ですよね。
鳥って一日餌をあげないだけでも死んでしまうし、餌がないからといって犬猫みたいにそこら辺のものを漁ったり騒いだりしないし。
特に殻付だと殻を餌がまだあると勘違いして殻を取り除くのを気付かなかったり。
そういう事を怠って死なせてかわいそうなことをしてしまいがちですね。
たぶん漱石もそういうことだったんじゃないのかな…
飼い猫が死ぬまで名前さえ付けるのを怠ってた位だから(⊃д⊂)

でも文鳥って女性的な魅力がありますよね。
赤いくちばしや、白いうなじ、曲線の柔らかさ。
じっと飼い主を見つめる眼にも何か物憂げな感じですし。
花にたとえるならやはり白百合が似合いますね。
文鳥は文学にもなるすばらしい鳥さんです(^-^)
Posted by 井上トロ at 2010年02月13日 07:57
1日エサをあげないと死んでしまう。子供の頃これがわからなくて小鳥を死なせてしまった事があり、それがずーっとトラウマになっていて今の白文鳥を迎えるまで相当苦しみました。今でもトラウマはありますが、今いる高齢犬がいなくなったら寂しくて耐えられないし、そういう理由を半分こじつけみたいにしてトラウマを乗り越えたいってのもある。小鳥が好きってのは当然ですが、そういう理由もあって思い切って文鳥を迎えました。
Posted by アコ at 2010年02月13日 09:19
子供の時に動物を飼って失った時の事はやはりトラウマになりますよね…
私もそういう記憶があります。
子供ゆえにそういうことってあると思いますが、私はそういうことがあるからこそ命の勉強になったと思います。
自分のせいで早く死なせてしまったからこそ、一生心の底に残る記憶ではあるけれど、命に対する責任の重さと大切さや愛しさ…
失わせてしまった命から学んだ大切な事でした。
時々矢ガモとか動物を愉快犯が殺したりするニュースを見ると、やはり子供の時にきちんと命の勉強が出来なかったんだなと思います。
ペット禁止の集合住宅とか、親が面倒だからペット禁止にしたりとか…いろいろ原因はあるんだろうけど、でも命の勉強はとても大切だと思いますね。
ペットとのお別れはいつか必ず来るものですが、それまでペットが飼い主といっしょにいられて幸せだったと思ってくれるよう精一杯可愛がってあげる!それしかないですね(^-^)
幸せに包まれてまたどこかで巡り合えたら私もうれしいですもん('∇')
Posted by 井上トロ at 2010年02月13日 15:50
そう。子供の頃の環境(思い出やトラウマ等)の影響は相当大きいと思います。その後の人格形成などに関係してくるように感じます。最近それをひしひしと感じています。あ、私だけじゃなくて友人知人を見ていても同様に感じています。子供の頃が非常に大切。文鳥でも一緒だと思うw ヒナや幼鳥の頃に大切にしてあげないと臆病になるかも。
Posted by アコ at 2010年02月14日 13:56
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